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“デザイナー”という職種の枠を越えて仕事をする面白さに気づいたら、自分のキャリア観が変わった。

今西 彩夏さん 30代 デザイナー
日清食品ホールディングス株式会社

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学生時代、Webの制作会社でデザイナーとしてアルバイトを2年間経験。大学卒業後、大手Web制作会社のデザイナーとして約4年間従事。2012年、現在の職場である日清食品ホールディングス(株)に入社。商品パッケージのデザインを担当している。
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Web制作会社にデザイナーとして入社し、現在は日清食品ホールディングス様のデザイナーとしてご活躍されている今西さん。
“デザイナーに固執していない”という将来のキャリアプランを持つ彼女の、今までのキャリアやそこに至るまでの心境の変化を伺いました。

―今西さんの今までのキャリアについて教えてください。

今西:幼少時代から祖母や母親の影響もあり、アートや美術に興味がありました。高校進学時には、県で唯一美術科がある学校へ進学。その後、武蔵野美術大学に入学し、デザインの勉強をしました。
卒業後はWeb制作会社に入社し、Webデザイナーとして約4年従事。2012年に、現職である日清食品ホールディングスに入社しました。現在は、商品パッケージのデザインをメインに担当しています。

学生時代のアルバイトでWeb制作にのめり込む。会社説明会で出会った“個性的な社員”の方々に心惹かれ、「一緒に働きたい」という思いからWeb制作会社に入社。

―幼少時代からアートが好きで、高校生の頃から芸術の道を歩み始めていたのですね。
デザイナーという職種でしたらいろいろな選択肢があったと思いますが、新卒でなぜWeb制作会社を選択されたんですか?

今西:実は、Web制作を始めたのは学生の頃が最初なんです。きっかけは、サークルのOBさんがWebの制作会社を立ち上げることになり、そこでアルバイトをしたことでした。その当時はFlashなどが全盛期で、「自分でプログラミングしたものがブラウザー上で動く」ということに感動し、Web制作にのめり込んでいったんです。
そんな学生生活を送っていたある日、とある大手Web制作会社の方々が、会社説明会のために学校にいらっしゃいました。その時に来てくださった皆さんが、その道のプロフェッショナルであり個性的な雰囲気を持っていらっしゃる方々で、「この人たちと一緒に働けるならすごく楽しいかも! 」と思い、迷うことなくそのWeb制作会社を受けて、めでたく入社することができました。

―一緒に働く人は、非常に大切ですよね。
Web制作会社というとハードワークなイメージもあるのですが、入社後はいかがでしたか?

今西:確かに労働時間は短くなかったかもしれません。ですが、プロフェッショナルな方々が集まっていた職場でしたので、その道を究めた人達とお互いに高め合いながらスキルを磨けるという点では、非常にやりがいを感じながら仕事をしていました。そんな社員の方々といろいろな仕事をさせてもらえたので、仕事は大変という気持ちよりは、楽しく乗り切っていましたね。
特に私の場合は毎年チームが変わっていたため、いろいろな人たちと働くことで様々な価値観に触れていたことが、私自身の学びにものすごく繋がりました。また、作るものも毎年違い、いろいろなことにチャレンジさせてもらえたため、自身のスキルUPを突き詰めることができる環境にあったと思っています。

「自分の手がけたデザインを、自分の生活の中で実感したい」という思いから、制作会社から食品メーカーへの転職を決意。

―素敵な職場だったのですね。
今は日清食品ホールディングス様でデザイナーとしてお仕事をされていらっしゃると伺いました。Web制作会社から食品メーカーに転職するのは比較的珍しいパターンだと思いますが、どのようなことがきっかけだったのですか?

今西:Web制作会社は、先程お伝えした通りすごく刺激的な職場でしたので、とても楽しく仕事をしておりました。ただ、仕事をしているうちに“自分の作ったものが、どういう人たちにどのような影響を与えているのか”ということを、「自分の生活の中で実感したい」という気持ちが芽生え始めました。そんな気持ちを大学時代の友人に相談したところ、彼女の現職である日清食品を受けてみないか、というお誘いがあったんです。彼女を見ていると、確かにいつも楽しそうに仕事をしている印象でしたので、そんな彼女のおすすめならと思い応募をして、現在に至ります。

話しているところ

初めてWebデザイナー以外の職種に関わる経験。自身の視野が広がるのを実感。

―友人に職場を勧められるというのは、とても嬉しいことですよね。実際に日清食品ホールディングス様にご入社されていかがですか?

今西:自分のデザインしたものが、自分の生活の中に溢れていることが非常に嬉しいですね。たとえば、友人がお店で「これすごく美味しいんだよ! 」と手に取った商品のパッケージが、自分のデザインしたものだったりしたこともありました。そのように、身近な人から私の仕事に対してレスポンスをもらえることもあり、それがとてもやりがいに繋がっています。
また弊社は、社長をはじめ会社全体に「おもしろいことをしよう!」という考えを持っている人が非常に多いんです。
他の食品メーカーのデザイナーさんは、通常なら商品パッケージのデザインのみに関わるケースが多いと思います。ですが弊社のデザイナーはそれだけにはとどまらず、様々な場面で様々な業務に関わることがあります。
たとえば先日、東京本社の社員食堂を改装したのですが、その食堂のデザインも社員が考えました。

また私が関わっているものでいうと、「長野県小諸市にアートツリーハウスをつくろう! 」というプロジェクトがあります。これは、弊社の創業者である安藤百福が生前、私財を投じて創設した『公益財団法人 安藤スポーツ・食文化振興財団』が主体となっておこなっているものです。
安藤は、人々の健康を支えるためのものとして “食”と“スポーツ”を大切に考えていました。ですので、日清食品では、『“食”を通して人々の“食べる”を応援』していますが、安藤財団では『青少年の溢れるエネルギーをスポーツによって発散させる』ことを目的に、様々なイベントを実施することで、人々の健康を支えていこうとしています。その一環で企画されているのが、私も運営に携わっている「小諸ツリーハウスプロジェクト」のイベントです。今までデザイン以外の仕事は一切してこなかったのですが、今はこのようなことにも関わることができているのですごく楽しいですし、視野を広げられているように感じていますね。

かばん
※このバックも今西さんがデザインしたもの。

“メーカーならでは”の自負。制作会社と事業会社での経験が、今活かされる。

―デザイン以外のお仕事にも関わっていらっしゃるんですね!
制作会社から事業会社に移り、そういった変化があったことに対してはいかがですか?

今西:メーカーならではの自負がある職場だと感じることが多々あります。
ご存知の通り、日清食品は、世の中にまだ存在していなかった『インスタントラーメン』をゼロから生み出した会社です。ですから、創業者がいない現在でも、「世の中のために食を創造する」といった精神が色濃く残っています。その精神に喚起され、私自身もクリエイターとしてのマインドに刺激をもらっていますね。自社の商品パッケージのデザインをする際も、“その商品のデザインのことだけを考えて作る”のではなく、“創業者精神や企業理念”なども考慮し、その商品パッケージを通して自社のブランディングに繋げていこうという意識を持っています。そういったところも、今までになかった自分の考え方だと思いますね。

また、事業会社に移って意識していることは、弊社から制作会社に発注する時に相手の立場に立った対応をするということですね。どういうことかと言うと、自分が制作会社にいた時には、依頼主から「どういった理由でこのデザインを選んだのか」、「なぜあのデザインはボツだったのか」ということを伝えてもらえず、全く分からないままになってしまうことが多かったんです。もっと言うと、依頼自体がなくなることもあり、しかしそれがどういった経緯でなくなったのかも分からず仕舞い…ということすらありました。それが原因で、私自身「モチベーションを保つのが難しい」と感じることもありました。

そんな気持ちは、私が制作会社に勤めていたからこそ分かることなのだと思っています。そのためどんなに忙しくても、取引先の制作会社にはしっかりとフィードバックをおこなうことを意識しながらご依頼するようにしています。制作会社、事業会社、どちらでも経験も積んだことは、私にとって大きな財産だと思っています。

新しいことへの挑戦が怖くなくなったことで、自分自身のキャリアプランの枠が広がっている。

―前職でのご自身の体験を、現職で活かすのは大切なことですね! 今後はどういったキャリアプランをお考えなのですか?

今西:具体的に「これをやりたい!」、「こうありたい!」というものはないんです。今は、あまりデザイナーという職にこだわっていなかったりもします。日清食品ホールディングスに入社して、デザイナー以外の仕事もするようになってから、“いろんな経験を積めるポジション”で仕事をしたいという気持ちが強くなりました。明確に将来の希望ポジションがあるわけではないのですが、マーケティングや宣伝などにも興味が沸いています。

私がデザイナーという職業だけに固執することなく自分のキャリアを考えられるようになったのは、入社時に社員全員に配られる『NISSIN CREATORS SPIRIT』というものの中にあった言葉がきっかけです。これは、現在の経営トップである安藤CEOがまとめた社員の心得なのですが、その中の1項目に「迷ったら突き進め。間違ったらすぐ戻れ。」という言葉があります。デザイナーという枠で仕事をするとどうしても“ものづくり”というものだけにとらわれてしまい、身動きがとりづらくなることが以前まではありました。

ですがこの言葉に影響を受け、新しい仕事をすることへの恐怖心がなくなったと感じています。それは、こうした意識が全社員に浸透していて、上司も「失敗することもあるかもしれないが、その失敗を恐れるよりは、まずはやってみろ!」と背中を押してくれる風土があるからなんです。ですから今は、“自分の手が届く範囲をどんどん広げていく”ことを意識的におこなっていますね。

キャリアプランを考える上で、もう1つ刺激をもらっているところで言うと、弊社は女性社員でもバリバリ働いている方がすごく多いというところです。私の入社のきかっけになった友人の社員も、現在は香港で現地の人たちと仕事をしていますし、マーケティング部の部長も女性だったりと、彼女たちの働く姿から本当にたくさんの刺激を受けています。
また、育児休暇後に復帰して活躍しているママさん社員もいます。ですので、ありがたいことに、今後自分が結婚・出産しても、働き続けられるイメージを持ちやすい環境なんです。そのような計画は具体的にはまだないものの、「ずっと働き続けたい」いう漠然とした希望は持っています。

本

自らの足で流行のお店に行くことも…自分のちょっとした引き出しを用意しておくことが大事。

―デザイナーにこだわらなくなるという心境の変化は、すごく大きいものですよね!
デザイナーさんというと、やはり日ごろから企画や発想といったことがメインのお仕事になると思いますが、情報をインプットするためにされていることはありますか?

今西:facebook等のSNSはよく見ています。あとは、通勤電車内の広告や街中のポスターなどは、職業柄自然と見ていますね。
また、新しい商品パッケージのデザインを担当すると、その商品に関わるような情報のインプットは意識的にしています。たとえば、その商品カテゴリーの人気店に足を運んでみたり、はたまた全く関係のない人気の料理店に足を運んでみて、出てきたお料理からインスピレーションを感じてみたり…。“頭ではなく胃袋で考える”ということを大切にしているんです。やはり、自分の体験からでしかアウトプットはしづらいと考えているので、いかにいろんな経験をするのかを意識的におこなっていますね。

あとは、流行りものや食のトレンドについては情報収集をしています。パッケージのデザインをする際に、現物をイメージできるように実際にお料理を作って撮影するんですが、野菜のカットの仕方1つとっても見え方が非常に変わるんです。その時に、「この間言った流行りのラーメン屋さんはこんな感じで野菜を切っていたな」とか、「女子に人気のあのレストランではかわいい盛り付けをしていたけど、あれを何かちょっと変えて応用できないかな」など、日ごろのインプットがアイディアをつくる際のちょっとした引き出しになっています。

―今は仕事とプライベートはどのようにしてON/OFFのメリハリを付けられていますか?

今西:あまりON/OFFを区切っている感覚はないです。
弊社は、商品ごとに担当のデザイナーが決まっていることが多いので、ある程度個人のスケジュールで仕事をすることができます。そのため、調子が乗らない日はなるべく早く帰って息抜きをしたりしていますし、一方で仕事が波に乗っている時は残業することもあります。
休日は、アウトドアに出かけることもあります。最近ですと、上司に教えてもらったことがきっかけで釣りをするようになりました。これから暑い季節にもなるので、まさに本腰を入れていこうかなと考えているところです!